NHKの調査 - 「中立的対応」をした自治体の内訳

今回のNHKの調査で、後援の申請を断るなどの対応を取ったのは合わせて20の自治体です。

このうち施設の貸し出しを断ったのは奈良市です。

内容の変更を求めたのは東京都、足立区、福井県、福井市、京都市の5つの自治体です。
後援の申請を断ったのは札幌市、宮城県、長野県、茨城県、千葉市、静岡県、堺市、京都府、京都市、神戸市、大津市、岡山県、鳥取市、福岡市の合わせて14の自治体です。
さらに奈良県は、脱原発をテーマにした講演会について「県の政策と一致しない」として後援を断っています。
今回取材した121の自治体のうち、こうした対応を取ったのは合わせて20、全体のおよそ17%で、このほかの自治体では昨年度「政治的中立」を理由に、同様の対応を取ったことはないとしています。

神戸市は後援断る
神戸市と市の教育委員会は、護憲の立場の市民などで作る実行委員会から、5月3日の「憲法記念日」の集会について、後援の申請を受けましたが、「政治的中立性を損なう可能性がある」として断りました。
実行委員会は、平成10年と平成15年の憲法記念日などに開催した集会では後援が得られていたことから今回の市などの対応を「後援承諾方針の恣意的(しいてき)転換だ」などと批判しています。
これに対して神戸市行財政局庶務課の八木真課長は、「市として後援を承認する際には要件として『政治的中立』であることを定めている。過去に神戸市が後援を行ったという事実はあるが、書面と聞き取りで今回の集会について検討した結果、昨今の護憲と改憲の議論の中で神戸市が一方の立場を応援することになるという危惧が生じ、後援を控えさせてもらった」と説明しています。

静岡県もTPP巡り後援拒否
静岡県はTPPに反対する団体が開くシンポジウムの後援を断りました。
県では、TPPについては国の交渉が続いていること、国内で賛否が分かれるテーマなこと、団体が過去にTPPに反対の決議を出していることなどから、行政の中立性が保てないとして後援を断ったということです。
同じシンポジウムに静岡市は後援を出したということで、この団体の事務局長を務める司法書士の小澤吉徳さんは「TPPに関して議論をしようと企画したもので県の決定には驚いている。こうした決定は市民の活発な議論にも大きな影響があり心配だ」と話していました。

足立区は調査報告書の内容変更
足立区では、助成金を出している区内の消費者団体がまとめたTPPを巡る調査結果の報告書について内容の変更を求めました。
足立区では毎年、区内の消費者団体に助成金を出し消費者の関心の高いテーマについて、区役所で展示会や発表会を開くとともに調査報告書にまとめてもらっています。
このうち、昨年度、TPPを研究した団体が提出した報告書について、区は「一方的な立場の意見だけを取り上げている」として、この団体に理由を説明したうえで内容の一部を削除したということです。
区では、この事業の内容について、5年前、区民からクレームが寄せられたことをきっかけに内容を事前にチェックするようになったということです。
足立区消費者センターの高野龍一所長は「あるテーマについて賛成派や反対派がいるなかで1つの方向だけ取り上げるのは問題があると考えている。原発、TPP、消費税は政治と密接に結びついたテーマで、判断が難しい」と話しています。

法律・条例に基づき認めた自治体も
一方、施設の貸し出しや後援について法律や条例に基づき断る理由がないとして、認めた自治体もあります。
長野市では、去年、市民団体が憲法に関する集会を企画し、長野市教育委員会に施設の貸し出しと後援を申請しました。
その後、長野市には「公共施設を使わせるべきではない」という抗議電話が複数あったということです。
市教育委員会は、この団体が過去に開催した集会で警備上のトラブルが起きていないかなどを調べたうえで、施設を貸し出すとともに後援も認めました。
長野市教育委員会生涯学習課の松本孝生課長は「ほかの利用者に迷惑がかかったり、施設の管理に支障が生じたりしないか、確認したうえで施設の使用を認めた。
地方自治法では公の施設の利用は正当な理由がない限り拒んではならないと定められており、法律や条例に照らして慎重に判断している」と話しています。

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